ここ最近、住宅ローンの金利が空前の低水準となっている中、『このまま毎月賃貸の家賃を払い続けるくらいなら・・・』と、マイホームの購入を検討されている方も多いと思います。
その際には月々の住宅ローンの支払いだけでなく、それ以外にもかかってくる諸費用(固定資産税・都市計画税、マンションの場合は管理費・修繕積立金)についても考えておかなくてはなりません。
ここでは、マイホーム購入にあたって新たに発生することとなる固定資産税(+都市計画税)について、簡単に説明していきたいと思います。
もくじ
そもそも固定資産税とは何か
固定資産税とは、土地・家屋および償却資産(これらを固定資産と呼びます)に対し、それらの価格をもとに課される税金のことを言います。
なお、償却資産とは、飲食店における厨房設備やレジ等のような、事業に使用する小額の資産を指すため、今回は土地と家屋について触れていきます。
固定資産税は、固定資産を保有することと市町村から受ける行政サービスとの間の受益関係に着目して、その資産価値に応じて課されるといった性質の税金です。
憧れのマイホームを購入すると、もれなくこの固定資産税の支払いの必要が生じます。
ただ、固定資産税は1月1日時点の所有者が支払う必要があるため、実際に支払うことになるのは翌年からとなります。
なお、購入した年の固定資産税は支払いこそ前所有者が行いますが、実際には売買金額に上乗せして精算するのが一般的です。
固定資産税はどれくらいかかるの?
では、具体的に固定資産税がいくらかかるのか、実際に計算しながらその計算方法を説明していきます。
固定資産税額を求めるための計算式は以下の通りとなります。
(固定資産税額)=(課税標準額)×(税率)
課税標準額とは、簡単に言うと税金を計算する上での基礎となる金額のことを言い、これを土地・家屋それぞれについて計算します。
なお、この課税標準額を事前に精密に計算するのは困難なので、ここでは簡易的に概算値を求める方法を紹介します。
1.土地の課税標準額
土地の課税標準額は、固定資産税算出用に定められた路線価に基づいて算出されます。
路線価とは、国が定めた基準に則って市町村が道路につけた価格のことで、その道路に面した土地1㎡あたりの価格を指し、3年に1度見直しがされます。
路線価については、各市町村のホームページや税務署で無料で見ることができます。
この路線価をもとに、その土地の区画の状況(形が変、奥行きが狭い、傾斜がある、高い建物が建てられない等)に応じて補正がかけられ、その土地の1㎡あたりの単価を算出します。
この補正を考慮すると非常に難解になるので、ここでは簡易的に路線価を用い、仮に路線価を1㎡あたり30万円、100㎡の土地とします。
土地の課税標準額には住宅用地の特例があり、200㎡までの住宅用の土地については、その課税標準額を1/6にすることになっていますので、30万円×100㎡×1/6=500万円が課税標準額となります。
なお、本来であれば、土地の急な値上がりによる税負担の緩和措置のため、この課税標準額にならに微修正が加えられることになりますが、今回は概算値を計算するだけなので割愛します。
また、この路線価については国土交通省が定める地価公示価格の約7割にするようにしているため、それを用いて計算してもおおまかな金額を算出することは可能です。
2.家屋の課税標準額
家屋の課税標準額については、同じ家屋を同じ場所にもう一度新築した場合にかかる費用を指す『再建築価格』に、経年劣化を加味して計算されます。
この再建築価格は、家屋の構成部分ごとの材質によって定められた金額を基に計算されますが、これも詳細に求めるのが困難なため、国税庁が発表している「標準的な建築価額表」を用いて概算値を算出します。
例えば、平成23年に建てられた敷地面積が70㎡の木造の家屋だとすると、平成23年の標準的な建築費は1㎡あたり15.68万円なので、15.68万円×70㎡=1,097.6万円となります。
さらに、ここに平成29年までの6年間の経年劣化(×0.65)を加味すると、1,097.6万円×0.7=713.44万円が家屋の課税標準額となります。
なお、家屋の経年劣化の係数については最低0.2までとなっているため、基本的に年々課税標準額は減少していきますが0になることはなく、所有している限りは家屋にかかる固定資産税は発生し続けます。
3.固定資産税額の計算
上記から、土地の課税標準額は500万円、家屋の課税標準額は713.44万円と算出されたので、ここに税率をかけて固定資産税額を計算します。
固定資産税の税率は1.4%となっています。
よって、土地にかかる固定資産税は500万円×1.4%=70,000円となり、家屋にかかる固定資産税は713.44万円×1.4%=99,881円となるので、合計で169,881円が1年間にかかる固定資産税ということになります。
固定資産税の減免措置について
上記の例では年間で約17万円という固定資産税がかかることになっていました。
固定資産税は平成25年度の税収が約8.6兆円もあり、国にとっては貴重な財源である一方、私たちにとっては決して軽くはない負担となっています。
そこで、固定資産税には政策上の観点からいくつかの軽減措置がありますが、活用頻度の高い2つの特例を紹介します。
1.小規模住宅用地の特例
上記の計算例でも使用していますが、住宅用地で200㎡までの部分については課税標準額を1/6に、200㎡を超える部分については1/3にする特例があります。
これは平成6年の改正によってそれぞれ1/4、1/2から拡大されたものであり、これによって住宅用地の課税標準額が大きく下げられることになっています。
2.新築住宅の税額控除
平成30年3月31日までの間に建てられた新築物件に対しては、一定の要件を満たした場合に限り、家屋にかかる固定資産税を1/2にする、といった軽減措置があります。
一定の要件とは、面積が50㎡以上280㎡以下の専用/併用住宅(※)で、そのうち居住用に使用している120㎡に相当する部分までが1/2となります。
そのため、ワンルーム等で50㎡未満のマンション等を購入した場合には、この軽減措置は受けられないことになります。
この軽減措置は新築から3年間、認定長期優良住宅の場合は5年間、耐火・準耐火建築物の場合はさらに2年間期間を延長して適用を受けることができます。
もし上記の計算例においてこの特例が適用になったとすると、家屋にかかる固定資産税が99,881円×1/2=49,940円となり、土地の固定資産税とあわせて70,000円+49,940円=119,940円となります。
(※)併用住宅の場合、1/2以上を居住用にしていることが条件となります
都市計画税について
都市計画税とは、その名の通り都市計画事業にかかる費用に充てるために設けられている税金であり、固定資産税と同様土地・家屋に対して課税されます。
その計算方法についても基本的には固定資産税と同様です。
土地・家屋それぞれの課税標準額を算出し、税率0.2~0.3%(※1)を掛けて都市計画税額を算出します。
ただし、固定資産税の計算上設けられていた特例が都市計画税においては少し取り扱いが異なります。
まず、小規模住宅用地の特例については、係数がそれぞれ2倍され、200㎡までについては1/3、200㎡を超える部分については2/3になります。
さらに、新築住宅の税額控除の特例も原則(※2)として設けられていません。
上記の例で計算すると、土地にかかる都市計画税は30万円×100㎡×1/3×0.3%=30,000円、家屋にかかる都市計画税は713.44万円×0.3=21,403円となり、合計で30,000円+21,403円=51,403円となります。
固定資産税と都市計画税をあわせると、新築住宅の特例がない場合、169,881円+51,403円=221,284円となります。
(※1)税率は0.3%を上限として、市町村によって異なります
(※2)東京都23区内の場合、平成29年度は都市計画税においても同様に半額とする特例措置を設けるなど、市町村独自の軽減措置がある場合があります。
制度を知って計画的なマイホーム購入を
上記の例であれば、月々のローン支払いに加え、年間で約22万円もの支出が発生することになります。
せっかく憧れのマイホームを購入したのに、その支払いが困難となって滞納したり、場合によっては差し押さえられたりしたら元も子もありません。
税金なので支払わなければならないものではありますが、制度をきちんと理解した上で収支のバランスを考え、悔いのないマイホーム購入となるようにしましょう。