私たちの住む日本は4つのプレート(北米プレート・ユーラシアプレート・太平洋プレート・フィリピン海プレート)の上に位置しており、大きな地震が頻発する地震大国と言えるでしょう。
1995年の阪神・淡路大震災をはじめ、2004年の新潟県中越大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震と、近年の大災害だけでも枚挙に暇がありませんし、2016年の1年間で震度5弱の大きな地震は実に32回もありました。
日本にいつ限りいつどこで起きても不思議はないと言われる地震ですが、現在はとりわけ首都直下型地震に関心がある方が多いのではないでしょうか。
また、地震への関心が高まるにつれ、地震保険への関心も強まってきています。
阪神大震災以降右肩上がりに地震保険への加入率は上昇しているものの、2015年度においてもいまだ29.5%の世帯が加入しているに過ぎず、7割以上の世帯が加入していないのが現状です。
今回は具体的に首都圏在住で持ち家の方にとって地震保険は必要なのかどうか、必要だとしたらどういう場合に必要なのか、解説していきたいと思います。
もくじ
地震保険とは?基本的な内容を簡単に解説
まずはそもそも地震保険とはどういうものなのか、簡単に解説していきたいと思います。
1.地震保険の対象
居住用の建物と家財が対象となります。
30万円以上の貴金属等や現金、有価証券などは対象外です。
また、自動車は自動車保険の対象となっているため、地震保険では保障されませんのでご注意ください。
2.地震保険の支払事由
「地震・噴火またはこれらによる津波」を原因とする「火災・損壊・埋没または流出」によって、建物や家財が損失を被った場合に保険金が支払われます。
3.契約形態の制限
地震保険は火災保険に付帯する形態で加入しなければならず、単体での加入はできません。
4.保険金額の制限
保険金額は火災保険の30-50%の範囲、かつ建物で5,000万円、家財で1,000万円を超えない金額でしか設定できません。
5.保険金の種類
ⅰ)全損:保険金額の100%(ただし時価が上限)
ⅱ)大半壊:保険金額の60%(ただし時価の60%が上限)
ⅲ)小半損:保険金額の30%(ただし時価の30%が上限)
ⅳ)一部損:保険金額の5%(ただし時価の5%が上限)
6.政府による再保険制度
地震保険はその支払金額が想定外に大きくなってしまう可能性があり、民間の損害保険会社だけでは賄いきれなくなる危険性のあるものです。
そのため、その保険金の支払責任についてはすべてを政府が引き受けています。
[aside type=”warning”]ただし、すべての地震保険の総支払限度額は11.3兆円となっています。[/aside]
保険の大原則、少ない掛金で大きな保障
保険の本来的な機能は、多くの人が掛金を出し合い、ある人に万が一のことがあればその経済的な損失を補填しあう、という助け合いのシステムにあります。
保険のシステムとは、例えていうなれば大海原(人生)に時折生じる荒波(万が一のこと)を、多くの船乗り(契約者)が力を合わせて乗り越えていく大きな船のようなものです。
保険に加入しないというのは、この荒波を自分一人だけの力で乗り越えていく、ということです。
保険が必要かどうかはこの荒波の大きさ、つまりは万が一のことがあった際の経済的損失の大きさにあります。
経済的な損失がそれほど大きくなければ自分一人だけの力だけでもなんとかなるかもしれませんが、大きくなればなるほど保険が必要となるでしょう。
例えば、車を持っている人であれば対人賠償3,000万円までの自賠責保険に加え任意保険に加入している人は多いでしょうし、子どもが生まれたばかりのお父さんであれば生命保険の必要性を感じる方も多いではないでしょうか。
地震保険の必要性を考えるにあたっても、まずはこの「万が一のことがあった際の経済的損失の大きさ」を前提に進めていきたいと思います。
地震保険への加入目的
次に、地震保険になぜ加入するのか、その目的を検討していきます。
加入目的は大きく分けて2つあります。
1つ目は「今と同じ建物を再建築し、今まで通りの生活を送れるようにする」ために地震保険に加入する。
2つ目は「とりあえず当面の生活費用だけでも補う」ために地震保険に加入する、というものです。
皆様はどちらの目的で地震保険に加入されたでしょうか?
地震保険は、そもそもの目的として「被災者の生活の安定に寄与するため」に作られています。
つまり、前者のような元通りの生活を送れるだけの保険金が支払われるような性質の保険ではありません。
よく、「火災保険の保険金額の30-50%しか支払われないのでは意味がないのでは?」と思われる方もいらっしゃいますが、そもそも地震保険はそのようには設計されていません。
考えるべきは、自分の今置かれている状況においてもし大地震が起きた場合、どれだけの経済的損失が発生するのかという点であって、その大きさによって必要性の是非を検討すべきと思います。
首都圏在住・持ち家の方が地震保険を検討する際のポイント
それでは、具体的に首都圏在住で持ち家の方が、地震保険を検討する際のポイントを解説していきます。
1.住宅ローンの残債
まず第一に確認すべきポイントは住宅ローンの残債です。
大地震が発生した場合には、今住んでいる住宅を失う恐れがあります。
そうなった場合でも住宅ローンは消えてなくなるわけではないので、今支払っている住宅ローンに加えて新しい住居にかかる家賃若しくは住宅ローンが上乗せでかかってくることになります。
そのため、住宅ローンの残債が多い方は特に必要性が高いと言えるでしょう。
特に首都圏の物件価格は非常に高いので、住宅ローンを多く抱えている人が多いと思いますので、より必要性は増してくるでしょう。
2.一戸建てかマンションか
経済的な損失の大きさで考えると、一般的に一戸建ての方が建築費用がかかっていることが多いため、必要性は高いといえるでしょう。
3.新しい家か古い家か
これはどちらも必要性は高いのですが、特に古い家の場合は注意が必要です。
築数十年が経過した家の場合、売ろうと思ってももう値段が付かないので地震保険なんて掛けても仕方ない、なんて思っていませんか?
古い家だろうが新しい家だろうが、もし地震で倒壊して新しく買い換えたり建て直したりする費用はほとんど変わらないはずです。
そして地震保険は再調達価額といって、同じものを再建築・再取得する際に必要な金額までを保険としてかけることができます。
そのため、古い家であっても、適切な保険金額を設定することで、万が一の際の経済的な損失は最小限に抑えることができます。
4.仕事は継続できるか否か
東日本大震災の後、雇用保険離職者票等の交付が前年比で1.4倍となるなど、地震を原因として仕事を失うことは十分ありえます。
特に派遣社員や契約社員の方は厳しい状況に置かれたようです。
地震で家を失い、さらには仕事まで失って収入が途絶えたとしたら、経済的な損失は計り知れません。
そうした最悪の場合も想定して、地震保険の必要性を検討すべきでしょう。
地震保険加入にあたってのポイント
以上の通り、基本的には地震保険は必要である、といっていいと思います。
そこで、どうせ加入するのであればできるだけお得に加入するために押えておくべき4つのポイントを紹介します。
1.公的保障を考慮しておく
地震などで被災した場合、『被災者生活再建支援制度』によって国と都道府県から支援金が支給されます。
被災者生活再建支援制度は、住宅の被害の程度に応じて支払われる基礎支援金と、住宅の再建方法に応じて支払われる加算支援金からなり、最大で300万円の支援を受けることができます。
2.契約期間を長期にして保険料を安くする
地震保険は、その契約期間を最大で5年間にまででき、その保険料を一括で支払うことで、支払う保険料の総額を安くすることができます。
例えば、5年間の保険料を一括で支払えば、5年分の保険料を4.45年分で済むため、保険料が11%引きになります。
3.4つの割引制度を活用する
地震保険には「建築年割引」、「耐震等級割引」、「免震建築物割引」、「耐震診断割引」の4つの割引制度が存在します。
建物の築年数や耐震性能に応じて、10~50%もの割引が適用されるため、今住んでいる家の性能を調べた上で、きちんと加入時に申告するようにしましょう。
4.主体となる火災保険を比較検討する
地震保険については、上述の通りすべて政府が保証しているため、どの商品も全く同じ内容・保険料となっています。
しかし、その主体となる火災保険は様々な内容・保険料の商品が各社から販売されているため、比較検討することで保険料をグッと抑えることができます。
また、地震保険は火災保険の保険金額の30~50%の範囲で付加することになるため、主体となる火災保険の保険金額も適切な金額に設定することが重要です。